About Koen
中等科・高等科校長 烏田 信二
2025 年度 1 学期始業式
皆さん、おはようございます。
中等科 1 年生、高等科 1 年生の皆さんとは、昨日の入学式でお目にかかりましたが、中等科 2 年生、 3 年生、そして高等科 2 年生、 3 年生の皆さんとは、2025 年度になってから、正式にお会いするのは、今日が初めてです。
皆さん、ご入学、そして、ご進級おめでとうございます。新しい学年のスタートにあたり、気分も一新し、様々なことに挑戦して参りましょう。
私自身は校長として 4 年目の学院生活がスタートいたしました。慌ただしい毎日ですが、皆さんの成長を楽しみに見守りつつ、皆さんと共により良い一年にして参りたいと思います。よろしくお願いいたします。
年度初めですので、建学の精神について確認しておきたいと思います。ご存知の通り、新約聖書マタイによる福音書 5 章に「あなたがたは世の光である」「あなたがたは地の塩である」というイエス・キリストの言葉があり、この「光」と「塩」をとって光塩女子学院という校名になりました。この聖書の言葉の意味は、生徒手帳にも書いてある通り、皆さんお一人おひとりがユニークな存在で、そのままでかけがえのない尊い存在であるということ、そして、さらに大きな存在に成長するよう、自分のまわりに喜びと光をまくことができるよう、自分を他の人々に開いていくよう、神さまから招かれているということです。言い換えると、まず自分を大切にし、それから同様に周りの人々も大切にしていくよう招かれているということになります。
この招きに応じて、今年度の目標は、「社会とのかかわりの中で歩む」にいたしました。自分、そして身近な他の人々からもう少し視野を広げて社会に目を向けていきたいと思います。古代のギリシア哲学者アリストテレスは、その著書「政治学」の中で「人間は社会的動物である」と言っています。また、旧約聖書の創世記 2 章 18 節には「人が独りでいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう」という創造主である神さまの言葉があります。これらのことから、私たち人間は、かかわりの中で生きることが自然なことで、それが人間の本来あるべき姿であると言えます。
このかかわりによって集まっている状態、集まっている人々、その結びつきを「社会」と呼びます。そう考えると、皆さんそれぞれのご家庭も小さな社会、この光塩女子学院という学校も一つの社会、光塩女子学院の周辺、すなわち高円寺および杉並区などは地域社会、もう少し広げると国家としての日本社会、さらに広げると、国際社会、人類全体ということになります。
光塩女子学院では、随分前から「もう一人の友」という言葉で世界中の困っている人びとの友になるということを呼びかけ、実行してきました。これをますます意識して社会問題を考え、行動していけたら幸いです。
具体的な社会問題としては、環境問題、貧困の問題、平和を脅かす問題、人口問題などが考えられます。
1 つ目の環境問題については、例えば地球温暖化があげられます。地球温暖化はなぜ起こっているのでしょうか。私たちの生活では、電力やガスなど多くのエネルギーを消費しています。これらを通して二酸化炭素が排出され、地球温暖化が進んでいますが、私たちはエネルギー消費を減らす努力を自分の日常生活の中でしているでしょうか。
2 つ目の貧困問題について、既に光塩女子学院ではメルセス会のシスター中村訓子の山谷ほしのいえへの物資支援等を通してホームレスの方々の自立支援を行っています。その他、NPO法人聖母による特別講座を通してマラウイコーヒーを親睦会で販売し、マラウイの子どもたちのために給食支援も行っています。一方で、私たちは一人の消費者として、開発途上にある国の人々の生活が成り立つように日常生活の中でどれくらいフェアトレード商品を購入できているでしょうか?コーヒーをはじめ、紅茶、チョコレート、バナナなど。私自身はついついスーパーでそうではない安い品を選んでしまっています。本当にそれでいいのでしょうか。
3 つ目の平和を脅かす問題は、広島および長崎の原爆、沖縄戦、東京大空襲、アウシュビッツ強制収容所のことなど、過去の歴史から学んでいくことで、ウクライナやパレスチナのガザ、ソマリア、ミャンマーなど、現在起こっている紛争に関して平和への働きかけ、さらにはこれらの紛争で苦しんでいる人々にできる支援をしていけたら幸いです。そのためには、私たちがこれらの地域の人々のことを知ろうと情報を集め続け心に掛けていくことが必要です。
4 つ目の人口問題について、日本をはじめとする先進国では少子高齢化が進んでいます。この少子高齢化から医療や介護の問題が生じています。しかし、人類全体としては人口が爆発し、食糧、水、土地が不足しています。それなのに、私たち先進国での生活においては、食べ物を余らせ、フードロスを多く出してしまっていますし、食べ物に限らず多くのものを使い捨てにし、多くのゴミを廃棄してしまっています。私たちに捨てない生活はできないのでしょうか。せめてゴミを減らす方法を一人ひとりの生活の中で工夫できているでしょうか。ゴミの問題から発展して、プラスチックゴミによる海洋汚染の問題もあげられます。
このように考えていくと、4 つの問題はすべて繋がっています。紛争は最大の環境破壊ですし、環境破壊は格差社会を生み出していて貧困問題を増幅させます。先進国の便利さを追求してきた生活は、環境問題も貧困問題も呼び起こしています。私たちの生活が実のところ、遠いところのことだと思っている社会問題に直結していると言えます。私のように頭で分かっていることがあっても、なかなか今の便利な生活に慣れてしまっていて、生活改善できない人もいます。一人でできなくとも皆さんで協力すれば身近なところで日常生活を変えていくことができます。さらに、地域社会や他の団体と協働すればより良い歩みを進めていくことができるかもしれません。この一年、是非とも積極的に皆さんでこの歩みを進めて参りましょう!よろしくお願いします!
バックナンバー